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――マイナは夢を見ていた。
遠くて、近い、現実世界の夢――
現実ではない――まさに夢のようなこの世界で、さらに眠りについて夢を見ると言うのも
おかしな話だが、その内容は、夢と言うよりは思い出に近かった。
そして、夢の中だからこそサイアドの影響が薄れて、『夢』を知覚出来ていた。
それは――
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リレー小説で書くやり方に慣れつつあるせいか、サイドストーリーもこの方法で書いてみる事にしました。
「マイナーって呼ぶなぁ〜っ!」
「良いじゃねぇか、あだ名なんだから」
「そうそう。お似合いのあだ名だぜ。なぁ、みんな!」
口々に、「その通りだ」とか「お似合い、お似合い」などの言葉が発せられる。
毎日がこの調子だ。
方向が同じとはいえ、(一緒に帰りたくなんか無いのに)よく帰りが重なってしまうのは、やはり同じクラスと言う事が大きいのかもしれない。
「じゃあなぁ〜、カツユキ」
「うん、じゃあね……」
かなりの脱力を感じつつ、やっと一人になれる。
――クラスの男子って、どうしてあんなに程度が低いんだろう?
子供っぽい男子に、馴染めない女子、自分より頭の悪そうな教師――
学校の勉強だって物足りない。
「お母さんが飛び級、許してくれないしなぁ……」
近年、ようやく日本にも飛び級制度が定着して来た。
だが、どんなに頭の良い子だったとしても、それには親の承諾が不可欠である。
当然それが得られない子供は、渋々低レベルの学問に付き合う事となるのだ。
母の言い分は「同じ年の友達を創るのは、今しかないから」
理由は理解できる。出来るのだが――やはり納得は行かないのだ。
家の前にたどり着く。
ポケットからカード式の鍵を取り出して、ドアにかざす。
ピーッ
ロックが解かれる。特に珍しくも無い、指紋確認型センサーロック解除キーだ。
「ただいまぁー……」
返事は無い。
いつもの事である。特に感慨も沸かない。
母親は中学の教師、父親は売れない小説家――らしいのだが、なぜかどこぞの大学の名誉教授になって、色々な講義に参加しているらしいので、父も家には滅多に居ない。
2階へ向かう。
一応コンコンとノックをしてからドアを開けた。
――そこには、一人の少女がカプセル型のベットに寝ていた。
傍らに誰かいる。
「……あれ?お父さん。」
「ああ、ミナか。
気がつかなかったよ。
……お帰り」
「……ただいま」
ばれやしないかと、ミナの胸はちょっとドキドキしている。
ベットに寝ている少女の名は愛(マナ)、ミナの妹である。
彼女は二年前、ミナと遊んでいて階段から落ち、頭をひどく打ちつけて昏睡状態になってしまったのだ。
……身体的には異常は見つからなかった。
脳の状態も、最先端の医学で治った――はずだった。
彼女は一向に目覚める気配を見せなかった。
もう、病院ではどうしようもなかった。
その後、家で介護できる様にカプセル型の治療ベットを買い、様子を見るだけの状態が続いて二年も経ってしまった。
点滴で栄養を与えるだけの、植物状態。
父は、暇があると、こうしてカプセルケース越しに妹の様子を眺めていた。
すでに死んでいるとも思えるこの絶望的状況。
だが――ミナは妹が生きている事を実感できていた。
それは――
「お父さん、ボク、お隣りのお兄ちゃんの所に遊びに行って来るね」
「また、ゲームをさせてもらいに行くのか?」
「うん」
「……お母さんにばれない様にな」
「うんっ、ありがと、お父さん♪」
ミナは、不自然なほどに明るく振舞うと、さっとランドセルを置き、家を飛び出した。
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とりあえず、『海奈』登場。
彼女が『マイナ』です。
初めて見た時は、男の子だとばかり思った。
なにせ、まわりの男の子達が「カツユキ」か「マイナー」としか呼ばなかったから。
髪はショートカットで、服も半ズボン(キュロットとか言うのか?)、一人称も『ボク』だ。
言い訳になるが、間違えてもしょうがないと思うのだが……。
後日、海奈にその事を話したら、「……別に良いけどね」と、「別に良くなさそうな」表情であしらわれたのが印象的だった。
その子供と出会ったのは、気晴らしにパチンコに行った帰りの事だった。
パチンコになど興味は無かったのだが、研究が詰まっていた時の気晴らしとして、他に思い浮かばなかったんだ。
「マイナーって呼ぶなぁ〜っ!!
だいたい、なんでついて来るんだよぉ〜ッ!!」
元気な声だった。
――あの位の年齢は、男の子か女の子かわかりづらいな。
などど、無意味な事を考えていたのが、悪かったのかもしれない。
……いや、今となって思えば、良かった事なのかもしれないが。
ぼけっとしながら歩いている私と、後ろからからかいながらついてくる少年達を振り切る様に、前も見ずに走ってきた少年。
……ぶつかるのは、むしろ必然に思えた。
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カナタさんが、思い出に浸っている場面です。
ちなみに、題名の『変人』はカナタさんの事です。
部屋に入る。
訳の解らないモノがそこいら中に充満するこの部屋は、それなのになぜかきれいに整頓されている様にも見えた。
「あっそびに来たよ〜!」
……返事が無い。
辺りを見まわすと、目的の人物は、パソコンのデスクに突っ伏していた。
「お兄ちゃん?」
海奈は、彼方の顔を下から覗きこんだ。
と、顔がデスクから起きる。
「ん?
……ああ、海奈か。また裏口から勝手に入ったのか?」
「だって、玄関開いていなかったし……」
当たり前である。
「――寝てたの?」
「どうやら、そうらしい。
……海奈と出会った時の夢を見ていた。」
「ふぅん……」
海奈には、興味の無い――むしろ、積極的に話題替えしたい話である。
それよりも、海奈はどうやって本題を切り出そうか、悩んでいた。
男の子に勘違いされた時の話などよりも、ゲームをしていた方がよっぽど面白いのだから。
海奈の曖昧な相づちと、そわそわとした態度に、彼方は苦笑した。
「――分かっている。
『サイアド』をしにきたのだろう?」
「……うん」
見透かされた事が気恥ずかしかったが、自分から切り出さずとも察してくれた彼方に、海奈は安堵も覚えていた。
『サイアド』――正式名称『CYBERNETIC ADVENTURER』(サイバネティック アドベンチャラー)
――現在、世界中で大流行している、バーチャルリアリティ(VR)システムを導入した初のネットゲームである。
五感を伴ったVRシステムの完成度と、脅威的な普及率、そして『違う自分になれる』と言う魅力は、他のどのゲームの追撃をも許さず、発売から五年経った今でも、世界中で大ヒットを飛ばしているのだ。
海奈は、その『サイアド』にはまっている多数の人間の一人だった。
「……マナちゃんの『端末』はちゃんとセットされていたか?」
「うんっ、もちろん!
今日はお父さんがいて、ばれないか心配だったけど、多分大丈夫だよ。」
そう――海奈が『サイアド』にはまっている理由は、ただ単に『面白いから』というだけではなかった。
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ここから、面倒くさいシステムの説明とかを書かなければ行けないわけですね。
ふぅ……大変そうですねぇ(汗;)
……ま、そのうちに。
彼方は、いつもの通りサイアドにログインする前の“儀式”を口にした。
「サイアドでの“目的”、ちゃんと覚えているか?」
「もちろんっ!
いちっ、マナの脳に“情報”と言う名の刺激を与えて、回復へ向かわせること!
にっ、伝説の錬金術師の残したレアアイテム“グラスヘイムの涙”を見つけること!
さんっ、もしくはその“伝説の錬金術師”本人を見つけること!」
毎回復唱しているのだろう、すらすらとミナの口から“目的”が紡ぎ出される。
「……それで、“グラスヘイムの涙”ってどんな形をしているか分かった?」
「すまない、まだなんだ。
――さすがにオリジナルのプログラムだからな。
C−アトランティスのセントラルタワーベースにもハックしてみたんだけど、登録されて無かったよ。」
「……まぁ、そんなんで見つかったら、苦労しないか。」
悟ったようなミナの台詞に、彼方は思わず苦笑した。
「ところで、セントラルタワーベースって、どこの事?」
「ああ、分かりにくかったな。
――その大陸の色んなデータが詰め込まれている――まぁ、大陸の専用ハードディスクみたいなモノだ」
「ふぅん……そんなのに、良くアクセス出来たね?」
「ま、昔取った杵柄だ。
『ゼフィロスの像』という分かり易い場所にあったのも、アクセスに成功した要因だ。」
次々とログインへの準備を進めつつ、二人の会話は止む事が無い。
「ところでさぁ……」
「なんだ?」
ミナが、遠慮がちに――だが、確実に不満そうに言う。
「“マイナ”になった時の知能レベル、もう少しだけ、上がらないかなぁ……?」
「それについては、何度も説明したと思うが……」
「うん、それはわかっているんだけど……
――やっぱ、あそこまで『子供』に戻っちゃうと、こっち(現実)に戻った時に、恥かしくって。」
言いながら、普通のサイアド・セットよりも、少々ごちゃごちゃとしたコードが繋がっている席に座る。
「しょうがあるまい。
以前に言った通り、知能レベルを通常にしておいた方が刺激は強くなるが、その分『患者』、『プレイヤー』双方に多大な危険を伴わせる事になるのだから。
なにせ、『患者』は多すぎる情報に対処できなくなる危険性があるし、『プレイヤー』は二人分の五感を統括しなくてはならない負担に喘ぐ事になる。
普段は『5』つしか制御していない所に、いきなり倍の負担がかかるんだ。
――情報処理をスムーズにするために必然的にどこかを犠牲にしなくてはならなくなる。
だが、運動系統にそれを回すと、それこそいざという時に対処出来なくなるからな。
今のレベルが、一番『安全』と『情報治療』のバランスが取れているんだ。」
「うーん……でもね、やっぱりちょっと恥かしいな♪」
わざとおどけた様に言う。
彼方は、それがミナ流の照れ隠しなんだと理解していた。
「まぁ、それは我慢してくれ。
これは、話した事無かったかも知れないが、情報量が多すぎた時のシミュレーションを行って見た事があるのだが、最悪の場合、二人とも再起不能になる可能性まで示唆された。
――わざわざ『M.I.N.Aシステム』を付属させたのは、そのためでもあるのだから。」
「……『九官鳥システム』?」
その言葉を聞いて不安になったのか、ミナはわざと確かめる様に呟きながら、苦笑した。
「『マインド・オブ・インテリジェンス・ナビゲイト・システム』だ。」
「はいはい。」
彼方の律儀な説明に、今度はあきれる様に溜息をついた。
不安はもう、消えている。
彼方の事は、信頼しているのだから。
「――でも、ホントに色んな意味があるよね、“マイナリス=グリム”って。
……全部、計算づくだったの?」
「……どっちだと思う?」
「うーん…………
――どっちにしても、ありがと。」
「ん?」
「『マイナ・リス』――つづりは『minaless』でしょ?」
「……ああ。」
「『less』の意味は、『〜ではない』だからね。
ボクが『マイナー』ってからかわれてるのがイヤな事、分かっているからそうしたんでしょ?」
言ってから、自分で照れてしまう。
いくら知能指数が高くても、ミナはまだ10才の女の子なのだ。
キザな台詞を言うのは、やはり顔から火が出るほど恥かしい。
「さてね。」
彼方の台詞と珍しい笑顔に、顔に血が昇るのを感じて、ミナは慌ててヘッドギアを深くかぶった。
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なんだか、ラブコメっぽい事してます(爆)
まぁ、夜中に書いたので、テンションおかしいんで、勘弁して下さい。
様々な知識を与えてくれた『モノ』――『バグクン』
自分と同じハッカーなのか、誰かの使い魔なのか、突然変異のモンスターなのか――それとも、
その名の通りバグなのか――マイナには分からなかったが、そんな事はどうでも良かった。
――“バグクン”と会ったのは、初めてログインした時だった。
『CYBERNETIC ADVENTURERへようこそ』
お決まりのメッセージを、適当に聞き流す――いや、耳に入らない。
なにせ、感性が今までの人生で、初めて味わうものなのだ。
「う〜〜……体のバランスが悪い〜〜……」
よたよたと、真っ直ぐに歩く事さえ危うい。
――ここは、C−アヴァロン――C−レムリアにほど近い島である。
大規模な都市はないが、中世風の遺跡が多く存在し、生息するクリーチャーも、グレムリンやフェアリーのような幻想的なタイプが多い。
……どうやら、ここがマイナの適性に合った土地の様だ。
「……あう〜、慣れない〜……」
「――なら、慣れるまで座ってればいい……」
――いきなりだった。
後ろからのその声に、ころんっ、とひっくり返りながら、そちらを見る。
天地が逆の、その光景の中に、声の主らしきモノは見えない。
「だぁれ〜?」
上下を確かめ、なんとか立ちあがる。
きょろきょろと見まわすが、やはりそれらしき姿は見えない。
「――ここだ。」
すっと、なにかが近くの木から落ちてきた。
>>いや、自分で降りたのかな。
「こんにちわっ!」
「…………お前が、『マイナリス=グリム』か。」
それは、小さな――身長1mもないマイナがそう思うのだから、50cmあるかないか位であろう――姿をしていた。
黒いローブに全身を包み――顔は見えないが、フードから少しだけ見える褐色の肌と黒い一本の角、そしてなにより際立つ黒い翼を持つ――それは、形容するならば――
>>まるで、漆黒の天使だ。
しかしその姿には、妖精種にも、悪魔種にも――もちろん天使種にも、あり得ない特徴が含まれている。
――少なくとも『ソレ』は、マイナの知らない『モノ』であった。
「そうだけど……ボクの名前、何で知ってるの?」
「私が、お前の『お友達』に、お前にこの世界の事を教える様、承ったからだ。」
話し易いようにと、気遣っての事なのか、『ソレ』はマイナの視線までゆっくりと浮き上がった。
「『お友達』って……『おにぃちゃん』の事?」
「ああ。」
「ふぅん……」
言葉は難しかったが、マイナは『ソレ』が“おにぃちゃんの『お友達』なんだな”と、理解した。
「キミ、名前なんて言うの〜?」
「……プロトからは、“バグクン”と呼ばれていた。」
>>『おにぃちゃん』の、こっちでの名前かな?
「じゃあ、ボクもそう呼ぶねぇ〜。
――よろしく、“バグクン”♪」
その言葉に“バグクン”は、なぜか悲しそうに、笑ったのだった。
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断片ばかりで申し訳無いです。
海奈がログインすると同時に、彼方もサイアドセットでログインする。
……これもいつもの事だ。
ただし、海奈はこの事は知らない。妹の事を除けば、普通のゲームだと信じているのだ。
M.I.N.Aシステムも、グレムリンとして登録している事も、『変身』出来る事も、『ちょっとしたカスタマイズ』くらいにしか考えていない。
だから、合法なものだと思い込んでいる。
彼方の役目は、海奈の行動を見守る事と、細かな調整をする事だ。
そのため、ログインの仕方も特殊である。
マイナのデータの隅に小さなスペースを取り、そこに住みつく形を取る。
意識も、万が一の時のために半分だけのログインとなっている。
現実世界、サイアド世界両方からのバックアップは、これにより可能になるのだ。
――全て、以前の失敗の時の教訓だ。
普通、サイアド世界の時間は現実世界の何倍もの早さで感じるように設定されている。
だが、ログイン時だけは、その時間は、遅く感じるようになっている。
パーティメンバーなど全員がログインするのを、揃うまで待つ事になるための配慮だ。
――この時ばかりは、サイアドと現実の時間の進み方が逆転するのだ。
現実の時間の方が早く流れる――サイアドの中でも不思議な空間――
現実世界に意識をおく彼方は、このつかの間の休息に、静かに記憶を遡らせた。
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今回は、説明ばかりです。
「いつっ、つつつ……」
「……危ないな、少年。
出来たら前を見て走った方が良いと思うぞ。
私だから、擦り傷程度で済んだかもしれないが、車にでもぶつかれば大怪我だ。」
「あ、ごめんなさい。
……あれ、お隣りの――」
「ん?」
「――確か、ミソノのお兄ちゃん……ですよね?」
最後だけ、なぜか敬語になる。
「確かにそうだが――少年、なぜ私の名を?」
「……お隣りくらい覚えて欲しいな。それと、ボク、女なんだけど。」
「そうか、それは済まない。あまり興味の無い事は、記憶しない事にしているんでね。」
あきれたような、その少年――いや、少女の言葉も、彼方にはあまり興味の無い事だ。
一つ一つ、衝突の時に落としたパチンコの景品を拾う。
「――あ、ごめんなさい。ボクも拾うよ。」
「……なぜ、謝る?」
「?――当たり前の事でしょ?ボクとぶつかって落としたんだし。」
「言っている事が良く理解できないのだが……」
さっきの事にしてもそうだ。
隣りの住人が何をしているか、どんな人物かなど、誰も気にしなくなって久しい。
「少女よ、一つ質問がある。」
「……良いけど、その『ショウジョ』って呼び方だけはやめてね?」
「では、『マイナ』――で良いか?」
「私の名前は『ミナ』ですッ!」
膨れっ面する海奈をよそに、彼方は淡々とした様子で話を進めた。
「わかった。
――では、ミナ、キミと私は面識はあったか?」
「ない……ですけど、なにもそんなにつっけんどんにしなくたって良いじゃない……」
「う、いや、責めているわけではない。確認しただけだ。」
泣き出しそうな雰囲気を感じて、慌てて言い繕う。
彼方にとって、泣く子供ほど扱いづらいモノはない。
「う、あ、そうだ。ミナ、キミはサイアドというゲームを知っているか――?」
話は、始まりに近づいていた。
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弱点発覚。
書きこんだ事自体がかなり久しぶりな、やばい状況(汗)
ココの存在自体、忘れかけてた……
――ヘッドギアを外す。
「早かったな。サイアドの時間で半日も経っていないぞ?」
「バグクンが、初日はこのくらいで戻った方が良いって……
――あ、“バグクン”って言うのは、あっちで友達になった――あ、えっと……」
頭が混乱している。何から聞いたら良いのか――
「海奈、サイアドは楽しかったか?」
「あ…………うん!――すごく、わくわくした。」
「そうか。」
心臓の辺りに手を置く。
――まだ、興奮してる。
ふいの、彼方の一言で、海奈は少しものを考える余裕が出来た。
――落ち着いて――ひとつずつ質問しよう。
海奈は深呼吸した。
「えっと、聞いて良い?」
「ああ。」
ちょっとほっとする。
――もちろんそんな事を言われるわけは絶対に無いのだが――
もし、「ダメ」と言われようものなら、またどうして良いか、判らなくなるところだった。
「――じゃあ、最初に――“プロト”って、お兄ちゃんの事?」
「……ああ、そうだ。」
「じゃあ、やっぱり“バグクン”って、お兄ちゃんのお友達なのね?!」
席から跳ね起き、飛びつくように質問する。
「それとね、不思議な声がしたのっ!
頭の中に、いきなり声が聞こえてきたのっ!」
「……声の主は、多分、マナちゃんだろう。
――多分、二つの意識に、脳がまだ同調し切れないのだろう。」
「へぇ〜……通りで、なんとなく懐かしい気がしたんだぁ……」
「しかし――そうなると少々調整しなければいけないな……」
そう言うと、彼方はぶつぶつと考え出す。
「あ、体もヘンだったんだけど……?」
「同じ事だ。」
一言で片付けられる。
もう少し、マナの事やバグクンの事で聞いて見たかったのだが、彼方がこうなってしまうと、
答えは帰ってくるが、端的過ぎて説明が無い――つまり、解りにくいのだ。
諦めて、席に横たわり、目を閉じる。
――思ったよりも、疲れてるな……
海奈はいつの間にか眠ってしまっていた。
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「書庫解凍」は「メルト」に決まった様ですね。
って、ココにでも書いて置かないと忘れそうで怖いです(苦笑)
そろそろやっと、書きたかった事に近づいて来ました。
「ミナ、キミはサイアドというゲームを知っているか……?」
「……うん。」
イヤな思い出のあるゲームである。
サイアドの、ちょっとした事でケンカに――いや、少なくとも海奈はじゃれているつもりだった。
だが、そのせいでマナは階段から落ちてしまったのだから。
「――あんなに有名なゲーム、知らない人、いないよ。」
考えている事とは別の言葉が、口をつく。
「では、この科学万能に近い現代、なぜサイアドのような、参加者――人間に頼ったゲームが、
これほど人気があると思う?」
景品を拾い終り、ごく自然に、一緒に歩き出す。
「う〜ん……
――『第2の人生が味わえる』から?」
「……まぁ、満点に近い答えだな。」
ゲームのパッケージの煽り文句をそのまま持って来ただけだが、彼方はその事には気づかなかったのか、
そのまま話を進める。
「……人は、科学に頼る事で快適な生活を手に入れたが、その分、他人と接しなくても生きていける社会が出来あがってしまった。
それは、便利で、気兼ねの無い生活である一方、他人との接点が極端に減ってしまった。」
「うん。」
「――人は、心のどこかでその面倒なはずの『人との付き合い』を求めていたのだろう。」
「……それが、お兄ちゃんの考える、サイアドのはやってる理由?」
「ああ。」
――思ったより、普通だなぁ。
少々拍子抜けする。
“怪しげなお隣りのお兄さん”――その言葉から、もう少し楽しい事を想像していた海奈にとって、
彼の言動は、まだ想像の範囲を超えない。
考えを読んだかのように、彼方が再び話しかけて来る。
「――ミナ、突然だが、英語は得意か?」
「ん〜、まぁまぁかな……同じ年の子達よりは得意だと思うよ。」
「では、『Time flies like an arrow』を訳してみてくれるか?」
「たいむ、ふらいず、らいく、あん、あろぅ?…………えっと……『光陰、矢の如し』……?」
復唱しながら真剣に考え込んむ。
少々時間がかかったが、海奈はちゃんと答えられた。
「そのとおりだ。
――だが、コンピューターに訳させると、もう一つ、答えを出してくる。
……解るか?」
だが、それはお褒めの言葉では無く、次の質問へと続く。
「うーん……わかんない。」
「『時間のようなハエは、矢が好きである』――だ。」
怒るでも無く、諭すでも無く、ただ淡々と言葉が続く――そんな感じだ。
「は?……そんな、無茶苦茶な……だいたい、ホントに訳せるの?」
「文法上は、な。
……なぜ、そんな答えを出すと思う?」
「え?あ、あの……さっき言ってた、文法のせい……?」
なんとなく、恐る恐る聞く。
彼方の反応が予測できないのだ。
出来れば誉められ、間違えれば諭される――そんな、学校での簡単な理論が通じない。
「ああ、その通りだ。
――そして、それのどちらが正しいかを判断できないからだ。
YESかNO、1か0しかないコンピュータは、『判らない』という答えが出せない」
「でも、『わかんない』ってちゃんと言うAI、いるよ?」
思わず、口を挟む。
段々、彼方の言葉に惹き込まれて行っている自分を感じながら、それを止める事が出来ない。
「AI――Artificial Intelligence――人工知能か。
それは、単にプログラムされていない事に対しての、反応にすぎない。」
「良く、わかんないんだけど……」
「一番最初、問いかけられた時に、それがプログラムされている内容かどうかと言う事だ。
もし、プログラムされている内容なら――YES――つまり、データを引出し、
プログラムされていない内容なら――NO――つまり、“わかりません”と答えるように、な。
……一つ一つの事柄に対し、データ――人間なら記憶だな――それを引出しているだけで、
自分で判断したわけではないと言う事だ。
――『あなたはこの答えを知っていますか?』と聞いて、『さぁ?どっちでしょう?』と曖昧に
答えるAIはいないだろう?」
「プログラムされていない事に対しては『わかりません』って言うようにプログラムされているだけだって事?」
「その通りだ。
……なかなか頭の回転が早いな。」
予想がつかない言葉に、今まで知らなかった知識に、わくわくとして来る。
誉められた事が、それにより一層拍車をかける。
「最近は有能なAIが開発されてきたので、そこら辺が巧妙に隠されているがな。
――それでもやはり、人間は物足りないのだろう……。」
そこでちょうど、彼方が足を止めた。
いつの間にか、海奈の家の前に来ていたのだ。
「へぇ〜……お兄ちゃん、頭良いんだねぇ。」
「ん?」
「学校の先生より、ずっと面白いんだもん。」
先ほど誉められた事がやけに頭に残り、自分でも不思議なほど気分が高揚していた。
家族にも久しく見せていなかった笑顔が、簡単に表現出来る。
「……お隣りなんだし、これからは時々遊びに行って良い?」
その言葉は、自然に口から出ていた。
なにか、研究の足しになるかも、とでも考えたのだろうか――?
「……まぁ、かまわんが。」
一瞬、考え込んだ後、彼方は無表情にそう答えた。
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ああっ、長いっ!
必死でまとめようとした割には、どこか後悔が残るし……
ちなみに、これが一つ前で書いた、「書きたかった事」です。
……上手く書けませんでしたけどね(少々悔しい)
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